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HOME >> 旅行記2005 >> 石塚小屋へ

石塚小屋へ

 投石平を後に、黒味岳分かれまで一気に下る。

 時間は既に15時を回っている。先回訪島したときは黒味岳をパスしたので、今回は何とかピークを踏みたいと思い、その場所にザックをデポして歩き出す。ところが空荷になった自分の足が思うように前に出ない。山に入って3日目の午後、相当に体力を消耗しているようだった。その場で一度立ち止まり、地図を広げて石塚小屋までの行程をシュミレーションしてみた。

 黒味岳分かれ=花之江河 15分
 花之江河=石塚小屋    40分

 ここに黒味岳への往復を 70分と計算して、計 125分。

 順調に歩いて石塚小屋到着が 17時半過ぎになる。トラブルが無ければ何とかなる時間だが、天気も崩れてきているし、体力的にも不安がある。「黒味岳にはどうも縁が無いな」と思いながら、僕は地図を仕舞い、回れ右して先を急ぐことにした。

 15時半過ぎに花之江河に到着。このころになると雨は大分強く降っており、僕は大した休憩もとらずに先を急ぐ。ここから先は僕にとっては初めて足を踏み入れるコース。歩き始めて直ぐ左に古い山小屋の跡を見かける。それに目を奪われたまま、木道の上に乗ったらツルッと滑って危うく大転倒しそうになった。こういう小さなヒヤリが起こるときは要注意だ。自分で思っている以上に消耗している証拠なのだ。その出来事を戒めとして、再度気を引き締め、先を急ぐ。

 コースには丸太の一本橋あり、鉄梯子ありとなかなかデンジャラスな場所がある。人通りの少ないコースにしては、良く整備されているとは思うが、僕みたいに色々な意味で余裕の無い状態で、しかもソロでいきなり足を踏み入れてみると、標識の少なさなど、本線との違いがあまりに際立っていて、不安を掻き立てられる要因になった。

 そんな中、谷の向こうに大きなサクラツツジの花を見かけた。こういう余裕のない時にもカメラを構えてしまうのは、性なのか。。。

050826-1.jpg
谷の向こうに見えたサクラツツジ
撮影データ:EOS-20D+EF100-400mmF4.5-5.6L IS USM(焦点距離220mm)
ISO100 F5.0 1/100sec  三脚使用

 また、雑巾を絞ったように捩れた枯存木の上に、冠のように着生したシャクナゲを見つけ、雨の中、ガスが晴れるのを待って何カットか撮影した。

050826-2.jpg
樹冠にシャクナゲを載せた枯存木
撮影データ:EOS-20D+EF100-400mmF4.5-5.6L IS USM(焦点距離250mm)
ISO100 F5.0 1/50sec  三脚使用

 そんなことをやりながら歩いていたため、気がつくと時間が17時に近くなってしまった。森の中に分け入った登山道は途端に暗くなる。そしてまた急激に下り出す。10分ほど歩いて、突然僕の中にある疑いが芽生えてきてしまった。

 「石塚小屋は、本当にあるのだろうか?」

 いま冷静になって考えてみれば、とても馬鹿馬鹿しい話なのだが、余裕が無くなって追い詰められた人間というのは、時として突飛な疑いを自分の中に抱くものだと思う。

 「途中で撮影をやりながらにせよ、花之江河から既に70分以上歩いている。コースタイム40分のところを70分だ。おかしい。。。経験的に、コースタイム×1.5倍の所用時間があれば、どんなことがあっても歩ききれるはずだ。しかし、小屋影すら見えない。。。。おかしい。」

 一度抱いてしまった疑いというのは、自分に都合よく展開していく。そのときの自分には、撮影でどの程度タイムロスしたかという部分の、客観的な検証がざっくり抜け落ちていて、花之江河通過から70分経過したという事実のみを、ことさらに強調して見てしまっているのだ。

 ここで僕はまた立ち止まり、地図を広げてコースを見直す。しかし、そのときはどうしても70分経過したという事実が自分の中で大きな意味を持ってしまい、この先に石塚小屋があるという確信を持つことができなかった。

 引き返すなら今だ、と思う。アテの無い石塚小屋を諦めて、淀川小屋を目指すか、あるいは投石岩屋まで戻るか?時間的にみてもギリギリ決断のしどころだ。それに登山道が急激に下っているので、今の自分の状態で、ここをもう一度登り返す自信がない。引き返す決断をするのなら、1分でも早いほうがいい。

 ひとしきり悩むが、「小屋が無いなんてことが、あるわけないじゃないか!」と自分の中で違う声が聞こえ、「もう10分行けば小屋到着さ!」というという違う声に背中を押され、前に進むことを選択した。

 しかし、そこからも更に道は急激に下っている。雨に濡れた登山道は滑り易く、歩行スピードは上がらない。気ばかり焦り、頭の中では「本当にこの選択でいいの?」と言う別の声がこだまする。そんなとき、雨に濡れた木の根の上に乗り、大転倒して、しこたま腰を打ち付けてしまった。

 痛さのため、僕は暫く起き上がれなかった。ズボンをたくし上げてみると左脚の脛に幾つか傷ができ、血がにじんでいる。いよいよ、まずいパターンだと思う。「何でもないところで遭難するときというのは、こんなものだろうな」と思う。過信か、状況判断の誤りか。。。。せめて、「石塚小屋まで、あと何km」という標識が出ていれば、確信を持って先へ進めるのに、と思う。

 その場でもう一度地図を出し、「さてどうしたものか?」と僕はもう一度考えだした。

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